本ウェブサイトでは、ELGUEDA WARD STUDIO(以下EWS)が2020年より大分県姫島村で展開しているソーシャリー・エンゲイジド・アート・プロジェクトの紹介・促進・記録を行っています。芸術と地域社会の関係を見つめ直し、持続可能な未来に向けた対話と創造の場を育むことを目指しています。
This website documents the socially engaged art projects of ELGUEDA WARD STUDIO (EWS) on Himeshima Island, where, since 2020, EWS has fostered dialogue and creativity to revitalize the connection between art and community.

SEA–Himeshimaにおけるソーシャリー・エンゲイジド・アート
瀬戸内海に浮かぶ小さな島から生まれる、記憶とコミュニティ、そして想像力の物語。
ソーシャリー・エンゲイジド・アート(またはソーシャル・プラクティス)は、対話や協働、共体験を通じて人々やコミュニティと関わる創作アプローチです。教育や地域活動として行われることもありますが、多くのアーティストがこの手法を用いて、社会・環境・文化に関するより深い問いに取り組んでいます。アーティストのスザンヌ・レイシーが名付けた「ニュー・ジャンル・パブリック・アート」は、芸術実践を市民社会の領域へと拡張する、こうした取り組みの一例です。
大分県姫島村に拠点を置くELGUEDA WARD STUDIO(EWS)は、2020年からこの小さな島でソーシャリー・エンゲイジド・アートを展開してきました。島の住民と密接に関わりながら、記憶を記録し、未来を想像し、日常の価値を見つめ直す活動を行っています。社会の仕組みの中で個人の声が見過ごされがちな今、EWSは物語が語られ、受け継がれる場を育てています。
「チェア・プロジェクト」(2020年〜)では、これまでに約60名の島民が故郷の記憶について語りました。生活の中の風景や慣習、個人的な思い出が重層的に記録されており、少子高齢化や仕事の減少、つながりの希薄化といった島の現状も浮き彫りになっています。
この対話をさらに発展させるかたちで、EWSは2022年、「島のアトラス:私たちの言葉は故郷の未来」プロジェクトを開始しました(川村文化芸術振興財団「ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成」採択事業)。77名の参加者が、島内外からリモートや対面で集い、未来の姫島について語り合いました。そして、29枚の手描き地図を制作し、それぞれの言葉と絵で「こんな島になってほしい」という未来像を表現しました。
チェア・プロジェクトが過去を見つめ、島のアトラスが未来を描いたことから派生し、生まれたのが「ワクワク交換ワークショップ」です。
このワークショップでは、島民の語った言葉やアイデアをもとに、クラフト、ストーリーテリング、ブックメイキング、環境意識を育む活動など、さまざまな創造的実践へと展開しました。これにより新たな対話が生まれ、世代や立場を越えた関係性が育まれています。
これらすべてのプロジェクトは、孤立や不確かさ、「ソーシャル・ディスタンス」が叫ばれたパンデミックの最中に実施されました。人が集まり、語り、共に創るという行為は、単なる芸術活動ではなく、分断の時代における「ソーシャル・ヒューマニティ(社会的な人間性)」を再確認する大切な営みでもありました。
SEA-Himeshimaは、こうしたコミュニティを基盤としたアート・プロジェクトの生きたアーカイブです。ここでは、インタビューや地図、映像、物語を通じて、姫島の声を辿ることができます。会話とケアを通じて、見過ごされてきた暮らしの知恵を未来へとつなぎ、持続可能で包摂的な社会を共に描いていきましょう。
